佐々木 優
現代語・現代文化専攻現代文化分野、2019 年 3 月修了
アメリカにおけるスポーツと人種問題についてもっと研究してみたい、という思いを胸に、最新の文化研究を行うことができる筑波大学の現代語・現代文化専攻への入学を決めました。本専攻では、従来の学問体系をふまえながら、文化研究を領域横断的に学ぶことができるため、私のような学際的なテーマには最適な環境だったと思います。
大学院に在籍時は、授業の参加と並行して、学会発表や論文執筆などの研究活動を行いました。アメリカに関する資料はもちろん、スポーツ関係の資料が豊富な筑波大学の図書館はまさに宝の山で、論文執筆時にはよく通い詰めました。
筑波大学は英語で受講できる授業が多く、さまざまな国からやってくる留学生と交流できるという国際性が魅力だと思いますが、その中でも現代語・現代文化専攻を選んだ大きな理由は、日本にいながら国際的な研究活動を行う環境が整備されていたことでした。授業では教科書を単に読んでくるだけではなく、ディスカッションへの積極的な参加が奨励されるため、主体的な学びのもとでより専門分野に対する知見を深めることができますし、日本にいながら英語も含めた活発な意見交換を行うことができます。
また、日本語でも英語でも研究活動ができる研究者になりたいとの思いから、在学時は英語の授業を積極的に受講するようにし、学会発表や論文投稿などの研究活動は英語で行いました。日本国内はもちろんのこと、海外での学会発表にも参加し、国内外の研究者と交流できたことは、博士論文執筆の上でとても良い経験となりました。
筑波大学はさまざまな研究支援を行なっており、海外で学会発表をするときに出していただいた奨学金は大変助けになりました。
このように日本語と英語の双方で研究能力を磨きつつ、将来の就職先として「大学教員」という職業を意識する上で、プリンスエドワード島大学で行われる、英語で授業ができる教員教員養成プログラムで学んだことは、教員となった今でもとても生きていると感じます。
本プログラムは、大学院修了後に教員・研究者として国内外で活躍することを目指している大学院生を対象とした、キャリア形成支援のための海外研修です。夏休み期間の開催だったため、日本より涼しいカナダの快適な気候の中で、集中的に学ぶことができました。
本プログラムでは基本的に、午前は英語力の向上とアカデミック・ライティング、オーラル・プレゼンテーション能力などの研究に必要な能力を向上させるための研修で、午後は英語で授業を行うための方法を学ぶ研修となっています。
プリンスエドワード島大学に設置された語学クラス(EAP クラス)にて実際の授業の様子を見学したり、授業で実際に使える IT 技術の紹介、授業運営の方法を学ぶ授業を受講したりと、充実のプログラムだったと感じています。
その中でも、シラバス執筆の方法はとても勉強になりました。学生として授業を受講するときにシラバスを参照する機会はありますが、自分が教員として授業を受け持つ際にも必ず直面するのがシラバス執筆です。欧米のシラバスは、授業概要や目的、到達目標などはもちろんのこと、授業の各回の内容や課題などの詳細まで記載します。本プログラムでは、英語圏のシラバスを分析しながら、シラバスとはそもそもどのようなものなのか、どのように授業を組み立てるのか、どのように課題を課すのか、などの教員となるにあたって必要となる方法論を学ぶことができます。
また、実際に授業で課す課題をどのようにするかペアワークを通じて決定し、プレゼンテーションを行う回もあるなど、アウトプットを通して先生方やクラスの仲間からのフィードバックをもらえる機会がたくさんありました。ルーブリック評価など、授業で実践的に導入可能な評価システムの方法論も学ぶことができたので、これも現在担当している授業で活用しています。
授業の他にも、蔵書の豊富な図書館や大学の寮にて海外のキャンパスライフの雰囲気を満喫するとともに、『赤毛のアン』の舞台ともなったプリンスエドワード島の美しい自然の中で、授業の合間に観光やミュージカル、買い物を楽しむことができました。
また、プリンスエドワード島大学の先生方やスタッフ、学生のみなさんと交流する機会がいくつか設けられ、自分の研究領域に近い先生をご紹介いただけるので、英語力を磨くとともに、最新の研究動向や新たな知見を得ることができました。
こうしたプログラムの他にも、本専攻では教員として就職した先輩の話や研究書の出版を目指すセミナーが開催されるなど、博士論文提出後のキャリアパスについてもさまざまな支援がありました。最終的に提出した博士論文をもとに、アメリカにて研究書を出版することができたのは、在学中のこうした経験によるところが大きいと思います。英語で研究書を出版するなど、大学院入学時には考えてもみないことでしたが、大学院の授業や海外研修プログラムを通じて、英語力や専門性、研究能力のみならず、キャリア形成の上で必要な能力も養うことができたと感じています。
本専攻では、多様な研究領域の先生方にそれぞれの専門領域から研究活動を支援してもらえますし、複数体制で指導を行なっていただけるので、自分の専門領域だけでは気づくことがなかった多くの学びがありました。博士論文提出というゴールに向けての道のりは、決して短いものではありませんでしたが、現代語・現代文化専攻の先生方の温かいご指導・ご支援のおかげで、博士号を取得することができたと感じています。
現在、アメリカ文化・文学や英語の授業を担当し、教育に携わる一方、研究報告や論文執筆を行っています。在学中に取り組んだ授業や研究活動、すべての経験が、現在の仕事につながっていると実感しています。
本専攻の大きな魅力のひとつとして、学生が興味関心を置く研究分野が幅広いことが挙げられます。院生室で行われる他愛ない会話から世界が広がることがありましたし、今でも仲間たちから学びや刺激を得ることが多々あります。本専攻では、こうした恵まれた環境において、充実した大学院生活を送ることができると思います。